なぜルーメンがあるの?
牛などの反芻動物は、通常動物が利用できない植物の繊維質をエネルギー源とするためにルーメンを発達させ、ルーメン内でそれらの繊維質を微生物の力を借りて利用可能な状態にまで発酵(代謝)させています。
ルーメン内の環境
ルーメン内は、摂取飼料、唾液、発酵産物などによって恒常性が保たれ、微生物が棲息するのに適した環境となっています。
ルーメン内微生物叢
- 細菌:60種類以上。内容物1g当たり109〜1011個
- プロトゾア(原生動物):90種類以上。内容物1g当たり105〜106個

表1 主なルーメン内細菌、それらのエネルギー源及び発酵産物
種類 |
性質 |
主エネルギー源 |
発酵産物 |
ルミノコッカス アルバス |
グラム陽性 |
セルロース、セロビオース、キシラン |
酢酸、ギ酸、エタノール、乳酸、コハク酸 |
ルミノコッカス フラボファシエンス |
グラム陽性 |
セルロース、セロビオース、キシラン |
酢酸、コハク酸、ギ酸、乳酸 |
ストレプトコッカス ボビス |
グラム陽性 |
グルコース、フラクトース、澱粉 |
乳酸、酢酸、ギ酸、CO2 |
ラクトバシラス ルミニス |
グラム陽性 |
グルコース、フラクトース、マンノース、ガラクトース |
乳酸 |
フィブロバクター サクシノゲネス
(バクテロイデス サクシノゲネス) |
グラム陰性 |
セルロース、セロビオース、グルコース |
コハク酸、酢酸、ギ酸 |
セレノモナス ルミナンチウム |
グラム陰性 |
グルコース、フラクトース、セロビオース、マルトース |
酢酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、コハク酸 |
ベイオネラ パルブラ |
グラム陰性 |
ピルビン酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、D-酒石酸 |
酢酸、プロピオン酸、CO2、H2 |
メガスファエラ エルスデニ |
グラム陰性 |
グルコース、フラクトース、D-乳酸、L-乳酸 |
酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、
カプロン酸、CO2、H2 |
メタノブレビバクター ルミナンチウム |
古細菌 |
CO2、H2 |
メタン |
牛の栄養源
摂取飼料の半分以上はルーメン内微生物によって変化を受けます。牛は、その微生物の生成物あるいは微生物そのものを栄養源として利用しています。
ルーメンでの炭水化物消化
飼料中には、セルロース、デンプン、糖などの炭水化物が大量に含まれ、セルロースなどの繊維質はルーメン内微生物の酵素によって分解発酵されます(下図参照)。

ルーメン内微生物による分解発酵の結果、飼料中の炭水化物は揮発性脂肪酸(酢酸、酪酸、プロピオン酸など)、乳酸、メタン、CO2に変化します。揮発性脂肪酸(VFA)の生産量は、飼料の量や質、牛の状態によってかなり異なりますが、これらはルーメン壁より大部分が吸収されて牛の主要なエネルギー源となります。
肝臓での糖新生とプロピオン酸
糖(グルコース)は、動物の発育や体を維持するために非常に重要な栄養素です。しかし、牛などの反芻動物では、炭水化物はルーメン内で細菌の発酵を受けてVFAや乳酸に転換されるので、グルコースはほとんど生成されません。そのため、牛はグルコースの供給源として糖新生に大きく依存しています(90%以上)。その糖新生の主な源になるのがプロピオン酸で、肝臓においてTCAサイクルの逆回りの経路を通ってグルコースが作られます。したがって、プロピオン酸は牛の生産性向上に特に重要なVFAです。

参考資料
- 新編 畜産学大辞典 1996年第一版、養賢堂
- 改訂・増補 家畜生理学 津田恒之著 1994年第一版、養賢
- 新ルーメンの世界 小野寺良次監修 板橋久雄編 2004年農文協
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